マーケティング

 

マーケティング

マーケティング
 
米国における技術移転プログラム
米国における技術移転プログラムでは,研究成果(発明)をライセンスするためのマーケティングをシステマティックに行うために,微に入り細に入る様々な手法が開発されている。以下に,AUTM (Association of University Technology Managers)の教育プログラムの例を中心に説明する。  
マーケティングは,典型的には,以下のステップからなる。    
* 内部(主に発明者)からの情報の収集(ステップ1)    
* マーケットへの発明の公表(ステップ2)    
* 外部(主にデータベース)からの情報の収集(ステップ3)    
* 見込まれるライセンシーの選択と順位づけ(ステップ4)    
* マーケット・コンタクト(ステップ5)
(1)研究者(発明者)からの情報の収集  
ステップ1は,主に研究者(発明者)からの情報収集である。この場合,情報収集の前に研究者(発明者)にマーケティングの意義についての一般的な情報を提供することが重要である。
1)マーケティングの重要性と研究者(発明者)に提供される情報  研究者(発明者)からの情報を収集するに際して,AUTMのプログラムでは技術移転マネージャーから研究者(発明者)に以下のような情報が提供される。
* 発明の技術的な点と商業マーケット的な点について質問したい点があること。
* 多くの発明者がそうであるように,商業的な問題にはほとんど興味がないと思われるが,しかし,商業マーケット的な質問は,技術的な質問より重要でないとしても,それと同じくらい重要であること。
* 連邦政府は,新製品を市場に出すのに必要とされる個人または企業の投資努力にインセンティブを与えるために特許権者に独占的権利を認めていること。
* 研究成果(発明)の特許化のために,また,外国出願をするのに,コストがかかっていること。
* もし,研究成果(発明)のライセンシングの可能性を考慮しないで発明の特許化をしたとすると,特許化のための投資コストを失うこと,他の特許を出願する財源を減らすこと,のリスクを負うことになること。
* そのために,マーケティングについて質問をしていること。
* マーケット調査は発明者の仕事でなく,技術移転マネージャーの仕事であること。
* しかし,発明者からの情報はマーケット情報として最も価値あるものであること。
* 他の誰よりも発明者が新技術について知っていること,発明者は,おそらく,その技術がいかに使用され,だれがライセンスに興味を示すか,知っているであろうこと。
* したがって,マーケティングの質問について最大に努力をもって回答してほしいこと。
2)マーケティングについての一般的な質問  
次に,マーケティングについての情報を研究者(発明者)から収集するために,研究者(発明者)に対して,次のような一般的な質問が準備されている。
* 発明の利点を使用してもたらされると考えられる多くの実際の,または仮定される製品またはサービスをリストアップされたい。
* 実質的に同じ製品またはサービスと考えられる多くの存在している製品またはサービスをリストアップされたい。
* この発明を用いて製品またはサービスを生産,使用,あるいは販売することに興味を示すと考えられる企業の名前をリストアップされたい。もし,企業とコンタクトがある場合は,名前と電話番号を記載されたい。もちろん,我々は企業にコンタクトする前に発明者と話し合いをする。
* この発明の商業的開発に投資を勧めるために,製品,方法,あるいはサービスの利点(例えば,この発明の製品または方法は,複雑でなく,人手がかからず,ユーザーフレンドリーであることなど)を記載されたい。  
これらの質問に対する回答は,質問表にコンパクトに記載することが求められる。
(2)マーケットへの発明の公表
1)サマリー・シートの作成  
上記方法で収集した情報にもとづいて,サマリー・シートを作成する。  このサマリー・シートには,AUTMのプログラムでは以下の事項(マーケット・サマリー・データ)を記載する。
* 製品またはサービス
* マーケット・サイズ(全世界/米国/ヨーロッパ/アジア)
* トップ企業
* 他の企業
* 競合する製品またはサービス
* マーケットのサイクル(成長/安定/縮小)
* 規制の必要性  
* 必要とされる他の投資  
これらは,かなり予測的な,不完全なものでよいとされている。  ここでは,要するに,マーケットに関する事項をマーケット・サマリー・データとして1~2ページの定型のサマリー・シートにデータ化してファイリングする点に意味がある。  このようなデータをもとに,さらに,研究者(発明者)とマーケティングの問題について話し合いを持つ。  この研究者(発明者)との話し合いの中で,必要があれば,以下のような質問リストを用いて,マーケティングに役立つと思われるより詳しい,より個人的な情報を収集する。これらの質問は,書面ではなく,面会または電話で行う方がよい。また,会話が進めば,これらのリストからはずれてもよいとされているが,これらは,かなりの実務経験と蓄積があってはじめて実行できることである。
2)発明者に対する質問リスト  
発明者に対する質問リストとして,AUTMのプログラムでは以下のような質問が準備されている。
* この技術に興味を示すと思われる企業に勤務している家族,友人,あるいは以前のクラスメートがいますか?
* 自分の会社を持っていますか? 会社をはじめることに興味がありますか?
* 企業に何かコンサルタントあるいはそれ以外の関係がありますか? その企業はこの技術に興味を持っていますか?
* この技術を企業にライセンスしたとき,当事者として,あるいは技術アドバイザーとしてその企業に関与する気はありますか?
* この技術に投資したい者をご存知ですか(例えば,ベンチャー・キャピタリスト,個人的な投資家)?
* 現在のポジションにくる前にどこにいましたか? 以前のポジションで誰か助けになりそうな者をご存知ですか?
* この技術とその市場について友人,同僚の考えを電話で探ることができますか?
* この技術とライセンスの可能性について話し合いを持つことができる者の名前と電話番号を教えられますか?
* この技術について見込まれるライセンシーと話し合う時間を持ってもらえますか?
* 我々のライセンス交渉を助けるために,プロトタイプあるいはサンプルを作り,またはデモンストレーションすることができますか?  
日本では,このような質問リストをそのまま実際に活用することは難しいと思われる。しかし,研究成果(発明)の商業化の可能性について最も詳しいのは研究者(発明者)であり,研究者(発明者)からの情報収集を重視する姿勢は非常に参考となる。このような質問のうち,日本でも適用可能なものを少しずつピックアップして活用して行くことが重要である。
3)NCDの作成  
収集した情報をもとに,各目標とするマーケットに発明を公表するために,1ページのNCD(Non-Confidential Desclosure :非機密的なディスクロージャー)を作成する(まれに2ページのNCDもある)。  NCDの様式は様々であるが,次の点が重要であるとされている。  
* 十分な(過度な)情報は提供しないこと。  
* しかし,興味をもって読んでもらえる情報を入れること。  
このNCDはマーケットに発明を公表する第1ステップであることから,ミニマムの情報の開示にとどめる。つまり,NCDは,興味がわくような情報にとどめ,このNDCをみて,容易に発明を実施できるような十分な技術/特許情報は載せないようにすることが重要である。NCDは,あくまでも,マーケティング情報であり,典型的には,以下の様式が例示される。  
* 発明の内容を簡単に,かつ効果的に説明する(第1セクション)。  
* この発明の前の先行技術の状況を簡単に記載し,さらに,この発明が提供できる重要な利点を強調する(第2セクション)。
* ライセンスの条項についての詳細を記載し,読者がコンタクトできる連絡先を記載する(第3セクション)。
* 必要により,発明者のプロフィールを記載する(第4セクション)。  
NCDは,大学の研究者にとって,この分野での貢献を証明する証拠となる。そのために研究者の情報を載せることを研究者が希望する可能性がある。  これらは,1ページにコンパクトにまとめる。第1セクションでは,例えば,この発明は特定の分野の新規な方法,製品であり,ライセンスする用意のあることを示す。第2セクションでは,発明の簡単な説明を示す。この場合,例えば,結果データを示すことはよいが,それがどのようにして得られたかは開示しないようにする。発明者の技術が優れていることを示す結果データは様々な形で示してもよい。例えば,材料の特性データを示すことはよいが,その材料の詳しい製法は開示しないことが重要である。このNCDは,ほとんどの場合,1ページであ。このNCDが,発明をマーケットに公表する基本的なドキュメントとされている。
(3)その他  
その他,マーケティングのステップとして,上記ステップ3の外部からの情報の収集があるが,これは,基本的に,コンピューター・データベースを活用する方法が採用されている。また,ステップ4~5の見込まれるライセンシーの選択と順位づけ,マーケット・コンタクトについても,非常に細かいマニュアルが開発されているが,かなり専門的になるのでここでは説明を省略したい。
 
 
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